前回表彰されたファイナリストがおよそ3ヶ月をかけて制作した14作品の中から、最優秀賞と審査員特別賞を10月末に審査員全員で厳選なる審査の上で決定。そして11月8日、渋谷にて表彰式が執り行われました。
最優秀賞には、河内美和子さんの「nature」、審査員特別賞には千頭龍馬さんの「Cokage Hat」が選ばれ、私は審査員特別賞の講評をさせて頂きました。
Cokage Hatに使用された本物の葉っぱは、白く漂白され繊細な葉脈の透明感が儚さを感じさせます。審査作品の多くは、斬新な形状や構造、デザインや素材感も特徴的なものが多くありました。
その中に佇む千頭さんの帽子は「引き算の美」といえるもので、例えていうならば、ヨーロッパ建築の中に楚々と佇んでいる日本建築のように穏やかで、侘び寂びすら感じます。装飾を削ぎ落とすことで素材感やシンプルな形状を際立たせています。あえて和の素材や技術を使わずとも、日本人の感性を思わせる表現の可能性を見ました。
その他の作品も力作ばかりで、作り手の熱量が伝わってきました。
私ももともと、ファッションの世界にいたのですが、環境への配慮をまだ呼びかけることは少ない時期でした。その中でものづくりのあり方について考え、今の和紙制作の道に入りました。
今回受賞されました、お二方の作品は、伝統工芸の手法にも劣らない、手作業を極めた作品であり、自分たちを育む自然環境へのリスペクトから自然素材を多く使用されていました。そのような帽子に触れる人はそこに込められたメッセージや、手間暇を想い、有り難く丁寧に帽子を扱うことと思います。
そうした想いに触れ、帽子作りの奥深さを感じ、帽子を愛する人が増えていき人々の関心が集まり、当コンペティションが益々発展していくことを期待しております。
当コンペティションをきっかけに、帽子の魅力を深く知ることで私自身も帽子が好きになりました。正直、帽子が似合わないと敬遠する人も多いと思いますが、自分に似合う帽子を探しトライしてみることは、小さなステップですが、自分の新しい可能性のドアを開くような新鮮な喜びをもたらします。
帽子を被ることを気負わず、日常から楽しむ人がもっともっと増えていけばいいなと思います。