デザイン、ディレクション/中川政七商店
デザイン、制作/りくう
3Dモデリング、デジタルファブリケーション/TERADA 3D WORKS
中川政七商店 季刊誌「ことつて夏」2024年発行 より
「立体物に和紙を漉いて生まれた、繊細で美しい一輪挿し」
3Dモデリング技術を活かして成型された立体のベースに、ひとつずつ手で和紙を海いて一輪挿しを作りました。和紙ならではの長い繊維が絡み合い、繊細でふっくらとした風合いに仕上がっています。真鍮の持ち手が付いていて、窓辺などに掛けて飾っていただけます。光に透けるとやわらかい表情を見せ、活けた植物を引き立てて、空間を自然に彩ります。
「新たな素材と技術で広がる和紙の可能性」
立体手浦き和紙を作っているのは、愛媛県西部の山あいにある町、西予市
宇和町の和紙工房「りくう」。名水百選にも選ばれた「観音水」が湧くこの地域に、和紙デザイナー佐藤友佳理さんが開いた工房です。立体物に和紙を渡くという挑戦のため、3Dプリンティングの技術を積極的に取り入れています。また、伝統的な和紙の原料である楮(こうぞ)に、自然の鉱物であるゼオライトを混ぜ込んだ新しい素材で海くことで、透明感のある質感や、調湿などの効果を和紙に付与しました。その上で、最終的には一つひとつ人の手で丁寧に漉き、乾かして作成。和紙の持つ繊細な風合いはそのままに、表現の幅を広げています。
暮らしの中に、和紙のやわらかさ、繊細さ、温かみを取り入れる和紙という素材を気軽に取り入れていただきたいと考え、持ち手の付いた一輪挿しを作りました。季節の植物をさっと活けていただき、差し込む光に当たる様子を眺めていただくと、素材が持つやわらかさや繊細さ、温かみといった魅力を感じていただけると思います。
中川政七商店 デザイナー
村垣利枝
暮らしが変化していく中で、新たな技術を用いて工芸に取り組んでいる作り手に焦点を当てたいと考えました。和紙のイメージを覆す新鮮な形状と、和紙ならではの繊細さが両立しています。
和紙と真鍮の異素材の組み合わせにも注目していただきたいです。
りくうデザイナー
佐藤友佳理
「曲面」を漉くことがとても難しいです。片面ずつ漉いていきますが、気を付けないと反対の面を漉いたときにもう片面の和紙繊維が剥がれてしまいます。なので、慎重に少しずつ漉いて、天日干しで乾かして、また少しずつ漉くという方法で、繊維がすべての面に定着するように工夫しています。非常に時間を要する作業です。