ITOMACHI HOTEL 0

Client
株式会社アドバンテック
Industry
ホテル内アート
Date
2023
Place
愛媛県 / 西条市

ディレクション/株式会社 GOODTIME
3Dモデリング、デジタルファブリケーション/TERADA 3D WORKS
技術協力/泉貨紙保存会会長 平野邦彦

実質的な電力エネルギーを消費しない日本初の”ゼロエネルギーホテル”〈ITOMACHI HOTEL 0(ゼロ)〉が愛媛県西条市に2023年5月27日に開業しました。
建物の設計を建築家、隈研吾氏主宰の隈研吾建築都市設計事務所が手がけられ、ホテル内主要箇所へのアート制作をりくうが担当させて頂きました。
カウンターバックアート、カフェ・バー内のメインアート、宿泊棟エントランス1F と2F、客室内など、多くのアート箇所を担当。
新規のデザイン性・技術を確立させ、これまでにない立体作品を制作しました。

水はあまねく世界の天地を循環し、私たちの身体、そして全ての生きとし生けるもの中に巡り続け生命を育み続けていると再認識すること。

色々な形で自分たちの内と外に存在し私たちを取り巻いている。
日常に何気なくある水がどれだけ自分たちを地球を潤し恵みを与えてくれているか(対し方を間違えれば脅かされるということも)ということに意識を向ける。

水は循環するものではあるが、今、そしてこの先の未来も私たちが必要とする綺麗な水を守るためにひとりひとりができることに思いを馳せてみる。
「水の都西条」に滞在する機会に向き合える、未来の私たちにとって大切なこと。

水の持つ多様な姿
軽やかに空を舞い降りてくる粉雪
降り続く音が心を和ませる雨粒
温かさを思わせる柔らかな湯気
雨上がりの空にかかる美しい虹

深く癒されたり、圧倒されるような現象に遭遇した時の心への作用。
そういった体験を多く得ることはとても豊かなことでありこれからの時代を生きていく糧になると感じます。

自然に囲まれた環境で制作している自分が得てきた多くの「豊かな経験」を作品という結晶にし、施設を利用する方々とシェアできれば嬉しいです。
今回の作品は、和紙作品としてはこれまでに見ない立体形状や表現に挑戦し、素材の色を尊重した生成りや白を基調とし、光と影による柔らかな凹凸を生み作品に奥行きを与えています。

■東棟01 カフェスペース 吊るしアート

西条市市役所隣に湧き出るうちぬき水の波紋の形状をデータ化し、水の持つ緩やかで優しい自然な形状のデザインパターンを複数作成。
それらをレーザー加工し、5000枚以上のパーツを作成。全てのパーツに一つ一つ紙繊維をコーティングしました。

クリアなパーツ、白く霧がかったパーツ、 濃淡があるパーツ、半導体のウェハーのように偏光するパーツなど、複数のマテリアル特性を織り交ぜ、雨や虹、雪などを表現。
紙繊維をコーティングの過程で発生する自然な表情を、水の複雑な自然現象と重ね合わせる形で制作しました。
当アートの形状は、水素と酸素からなる水の分子構造、水分子H2Oの形状から想起される複数のデザイン案から選び、「水」の姿として意味のある形状であることと、デザイン性との両立が図れるものとして選びました。
立体化し雲の造形を手作業で作り出しその構造はパーツを立体化するうえでありがたくも副産物的にとても頑丈なものとなりました。

全体的なイメージ 立体構造化を「うちぬき」から湧き上がる水分が雲として天に向かって大きく渦を巻くように上り、再び雨や雪となって降り注ぎ、繰り返し循環するような姿をイメージし、水が私たちの生命を潤してくれる姿をアートとして表現しました。

■東棟02 カウンターバック・アートフレーム

レセプションアートに関して西条市の地図をベースにデザインをしました。
地図のデフォルメをする過程において「西条市のイメージ」や「水の循環」などのキーワードを用い、ジェネレーティブAIでデザインの検討などを部分的に行いました。

構成したデザインを3D技術で立体化し全体のイメージをシミュレーションし、その後それらの3Dデータを、3Dプリンターやバキュームフォームなどのデジタルファブリケーションを駆使して和紙のタイルを196枚作製しました。

りくうの和紙タイルの新規性としては、和紙コーティングによる紙のテクスチャー感がありながらも透け感や色を自由に検討できることなどがあります。

西条市は「海と里と山」を持ち、登山客に人気の山々を擁し、里には農業と大手企業の工場が栄え、瀬戸内海に至る。
西条市の魅力を表現したアートは、上からブルーのタイルで作られた「水を表すエリア」、イエローの「街と田畑を表すエリア」そしてグリーンの「山を表すエリア」と分けられています。

お客様とのコミュニケーションの糸口になればと、街エリアには、ITOMACHI HOTEL 0 の建物を表したタイルと山エリアには石鎚山頂上を表すタイルがあります。

■南棟01 共用部1F・2Fエントランス 壁面アート
南棟エントランス前にある「うちぬき」の噴水から湧き出る水粒、水の泡が踊り舞い上がっていくような姿を表しています。

お客様に、もちろん子供さんたちにも直感的に親しみを感じてもらえるような丸くてころんとして、紙の素材感をまとった軽やかなパーツがふわっと空にのぼっていくような姿。
滞在中がお客様のITOMACHI HOTEL 0 の穏やかな空間の中で、日常から離れ解放的になった気分をより柔らかにほぐして潤してれるアートとなれば嬉しいです。